指定難病311 先天性三尖弁狭窄症

1.概 要

孤立性の三尖弁の構造異常は先天性心疾患全体で見ても比較的稀なものである。三尖弁逆流・狭窄を主病態とするものは先天性心疾患全体の5%前後を占め、その半数以上がEbstein奇形であり、先天性三尖弁狭窄症の発症頻度は先天性心疾患の0.3%との報告もある。三尖弁狭窄の程度によるが、重症例では重度の心房流入血流のうっ滞を生じ右房圧が上昇する為、心房間交通がある場合は右左シャントが発生しチアノーゼを生じる。治療する上で問題となるのは三尖弁狭窄・右室低形成の程度が重要であり、また合併する心奇形(三尖弁逆流・肺動脈弁狭窄・肺血管低形成・心室中隔欠損症等)に大きく左右され、二心室治療からFontan型心内修復術まで様々である。


2.解 剖

先天性三尖弁狭窄の原因としては、狭小弁輪・短い腱索・低形成な弁尖・交連癒合・パラシュート様奇形や三尖弁輪上の狭窄が原因となる。形態としては正常に近い三尖のことが多いが、二尖様となることもある。

3.病 態

基本的な病態は右室流入障害による体静脈うっ血と、心房間交通があれば右左短絡による様々な程度のチアノーゼによる症状である。また、新生児期の重症例の血行動態は三尖弁閉鎖と同じ傾向になる。右室流入障害による右房圧上昇の為、心房間交通により静脈血が混入する。肺血流維持の為に動脈管開存を維持する必要がある症例も存在する。


4.臨床症状・所見

聴診所見としては,弱い開放音や前収縮期に増強する拡張中期ランブルなどがあり,雑音は静脈還流を増加させる手技(例,運動,吸気,下肢の挙上)によって増強および延長し,静脈還流を減少させる手技(起立,バルサルバ手技)によって減弱および短縮する。
病態により症状は異なる。主たる症状は心不全・低酸素血症に伴うものである。重症三尖弁狭窄の新生児症例は三尖弁閉鎖と病態が近くなることもあり、その場合は動脈管依存性血行動態になり早期の介入が必要となる。

1)心不全の症状
新生児・乳児期~幼児にかけては哺乳不良・体重増加不良・多呼吸・浮腫・肝脾腫など。
学童期以降になると易疲労感・動機・息切れ・食思不振など多岐にわたる。

2)低酸素による症状
新生児・乳児期~幼児にかけては、多呼吸・チアノーゼ。
学童期以降になると易疲労感・頭痛・過粘ちょう度症候群・バチ状指・チアノーゼ性腎症、また右左シャントに伴う細菌性脳膿瘍や塞栓症も発症する可能性がある。




5.検 査

三尖弁狭窄症の重症度評価については2014年AHA/ACCガイドラインにはstage CとDのみ記載されている。


  1. 胸部レントゲン:上大静脈の拡大と右房の拡大を認めることがあり、これらは心右縁の拡大により示唆される。
  2. 心電図:左軸偏位を呈し、下方誘導およびV1において右室肥大に見合わない右房拡大と高い尖鋭P波を認めることがある。
  3. 心臓超音波検査:三尖弁については狭小弁輪や弁尖の肥厚、開放障害が見られ収縮期に加速する血流が見られる。また三尖弁逆流や様々な程度の右室低形成が観察されることが多い。右房、上大静脈、下大静脈の拡大が見られる。心房間交通がある場合は重症狭窄により右左シャントがみられる。
  4. 心臓カテーテル検査:右房圧は上昇し、著明なa波を認める。拡張期に右房右室圧格差を認める。右房造影で右房の拡大を認めるが、三尖弁逆流が少ない症例では右室は拡大しない。心房間交通が存在する場合は右左シャントが見られる場合がある。右室造影では様々な程度の右室低形成が見られることが多い。
  5. MRI:三尖弁の情報だけではなく、右心室の機能や容量なども測定することが可能である。

6.治療法

  1. 内科治療:新生児症例の三尖弁閉鎖症類似血行動態を呈する患児は、動脈管依存の血行動態になっていることが多く、プロスタグランディン製剤投与を行い手術介入が必要であり、将来的にどのような治療方針とするかは個々の症例によって異なるが、右室の大きさや機能・三尖弁の狭窄の程度により二心室治療からFontan型治療まで選択される。軽度~中等度の狭窄に関しては症状に応じて治療を考える。体うっ血による症状では利尿剤投与を行うことが多い。また、三尖弁逆流が無い症例は経カテーテル的三尖弁交連裂開術も考慮される。


7.予後・管理

狭窄の程度、施行された手術により予後は異なると思われるが、非常に稀な疾患であり予後の報告は多くない。軽症例は無投薬や、少量の利尿剤のみで良好な経過が得られる。心房性・心室性不整脈が発症する可能性は正常より高く、生命予後や生活の質を規定する。1.5心室治療やFontan型心内修復術は体静脈うっ血という問題があり、遠隔期に様々な難治性合併症を発症する可能性がある。
妊娠出産に関しては、心不全や不整脈のリスクが高まる。その為、軽度~中等度の狭窄症例は運動負荷テスト等で運動耐用能評価を行い、介入を考えることが必要である。妊娠中に心不全の症状が出たときは手術やカテーテル治療を考慮すべきである。状態によっては循環器専門医施設・集中治療可能施設での出産が望ましく、各科の協力のもと妊娠・分娩管理が必要になる。Fontan型手術を施行した患者についてはFontan手術後患者の妊娠・出産を参照する。

 

 
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